第21章 【呪術廻戦】DOOR【1】
思っていた反応と違ったのか、硝子は唇を尖らせて「なによぉ」と臍を曲げている。
しかし一人だけ、彼女の将来の夢に興味関心を示した人間がいた。
釘崎野薔薇だ。
「幸せって、なに?」
純粋な疑問。
幸せとは何か。
抽象的すぎて、それがどういうものかちゃんとわからない。
幸せになりたいという同級生がいて、それがどんなものかをちゃんと知りたかった。
そして、もし魅力を感じられるようなものだったら、釘崎も幸せになりたいと、そう思った。
お互いにお互いの瞳を見つめること数秒。
硝子は満面の笑みで「幸せ」がどういうものかを話し始める。
「素敵なことがたくさんあることだよ」
「素敵な事?素敵な事って楽しい事?」
「うん。でも、楽しいことばかりじゃないよ」
硝子は言った。
怒って喧嘩する事も、悔しくて泣いてしまう事も、嫌なことがあって落ち込んでしまう事も、なんでも全部が素敵な事だと。
それが幸せなことなのだと。
「そんなの……素敵な事じゃないよ」
釘崎は理解できなかった、硝子の言っていることが。
怒って喧嘩して、悔しくて泣いて、嫌なことがあって落ち込む。
一体これのどこが素敵な事だと言うのか。
幸せな事だと言うのか。