第3章 【爆豪勝己】盲目をつきやぶれ
夜、部屋に戻り、私は一人普通に過ごした。
バクゴーが成人したら一緒にお酒でも飲もうかなと、冷蔵庫に常備しているアルコールの類を思い出しながら、明日は休みということもあり、一本だけ取り出し降下した。
スマホを寝そべりながら弄り、きりのいいところでテーブルの上に片付け、明かりを消して目を閉じた。
バクゴーのこと考えた。
初めて会った時よりも彼の言動はだいぶ落ち着いた。
個性も何かを掴んだのか、遅くまでデクやショートと一緒になって訓練している。
それにしても彼の成長速度や集中力、ストイックさは素晴らしく美しかった。
一度集中してしまえばなかなかこちらの声には気が付かない。
目標のためにひた走る姿には私にも覚えがあって、同じような焦がれ、同じような情熱を経験したのだと思うと、毛布をぐしゃぐしゃにして「あー!!」と叫び出したい気分になった。
やらなかったが。
それにしてもなぜだか呼吸が詰まる。
気持ちを落ち着かせようと深呼吸を繰り返しているうちに、やがて睡魔に飲まれ、私の意識は闇へと落ちた。
バクゴーと2人きり、家のソファで語らっていた。
彼も私も並んでくつろいで、なんてことない話ばかりをした。
まるで昼食を食べている時のように。
私が作り上げた夢の中の鋼のは実に無邪気に笑った―――見たこともない種類の笑顔を私に向けた。
私は浮かれて、彼の頭を撫で、抱き締め、唇に親指で触れた。
彼は少しだけむっとして、なんだよ、と尋ね、私の指の腹には頼りないやわらかさが擦り付けられた。
幼い少年に、まだ子供の彼に、こんなことをしてもいいのだろうかと私は怯んだが、バクゴーはバクゴーに触れる私の手を取った。
そのまま離してくれない。
「俺の唇が気になんのか?」
手のひらに彼の頬が収まっている。
「変なやつ」