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【雑多】いつかどこかで【短編集】

第3章 【爆豪勝己】盲目をつきやぶれ






ここ最近、インターン生たちとの距離が随分と近くなったような気がする。

毎日のように彼等とパトロールをしているからだろうか。
それとも時間さえあれば息抜きだと言ってクッキーやチョコなどを持ち寄り、エンデヴァー事務所の小さなお茶会を定期的に開催しているからだろうか。
どちらにせよ、私達の距離は以前にもまして近づいている。
とくにバクゴーとは。
物理的にも精神的にも。
四六時中一緒、とまではいかないが、報告書の添削は必ずと言って私だし(但し、ほぼ完璧なため添削をする必要がない)、昼食を一緒に取ったり、帰りはどちらかがどちらかに挨拶をして帰り、朝もまたどちらかがどちらかに挨拶をする。
とにかく他の2人とは比べ物にならないほど私達の距離は狭まっている。

そのせいで私はおかしくなった。

その日バクゴーは、いつものように報告書を私の前に差し出した。
既に夕日が傾き、エンデヴァー事務所の大きな窓からは西日が差しこみ、バクゴーの金の髪が色濃く染まった。
文字をなぞる指先は光を橙に反射し、ただそれだけのことなのにとても美しく綺麗だった。
報告書を読み上げる声は少しだけ低くて、次々読み上げてくれるものだから、私はただ彼の声を鼓膜に染み込ませているだけでよかった。
合間に挟まるやわらかな息継ぎに私が聞き入ってしまっても、彼の言葉に淀みはなかった。

私はたぶん、この先どんなことがあろうと今この瞬間のことを忘れないだろう。
そう確信していた。
きっと何度でも思い出す。
どんな時にでも。



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