• テキストサイズ

【雑多】いつかどこかで【短編集】

第20章 【ヒロアカ】Who killed Cock Robin【2】






A組から一番近いトイレに着き、切島は用を済ませふと気が付いた。
水は流れるのだろうか、と。
もし、流れなかった場合のことを考えた切島は羞恥で顔を赤らめたが、それは杞憂に終わり小便器は機能し水を流した。

「ふぅ、」

安堵のため息を吐き、外で待っている轟と合流しようとトイレの扉に手を掛けた時だった。
後ろから誰かに呼ばれたような気がした。

「上鳴……?」

なぜ、そうおもったのかはわからない。
しかし声の主を切島は姿をくらました上鳴だと思った。
そして同時に「そんなわけない」という思考に陥ったが、遅かった。
切島はもう、後ろを振り向いていた。

「…………」

辺りを見渡すが誰の姿もない、声もしない。
恐怖が極限まで上り詰めたせいで、幻聴が聞こえたのかもしれない。
乾いた笑みを浮かべ、切島はさっさと轟と合流しようと今度こそトイレの扉を開けた。
そして、自身の目を疑った。
切島の目には、"あの日の光景"が広がっていた。
同級生の女子が大柄の男に脅されていたあの日が―――。

救けようと足を踏みだそうとした。
が、身体が石にでもなったかのように硬直して指の一本すら動かすことができない。

行かなきゃ、救けなきゃ。
動け、動け、動け動け動け動け!!

頭ではわかっているのに。
何度も言い聞かせているのに。
"あの日"に起きたことが繰り返された。

その場に立ち尽くす切島は、救けにはいった"彼女"の姿をじっと見つめた。
そして、"彼女たち"もまた静かに切島を見つめる。
彼女たちの冷たい眼差しが切島の不安定で弱い心に突き刺さり、逃げるように駆けだした。
どこからか「男らしくねえ」と聞こえたような気がしたが、"今"の切島には聞こえていない。


/ 419ページ  
エモアイコン:泣けたエモアイコン:キュンとしたエモアイコン:エロかったエモアイコン:驚いたエモアイコン:なごんだエモアイコン:素敵!エモアイコン:面白い
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp