第20章 【ヒロアカ】Who killed Cock Robin【2】
『じゃあ、変われよ』
「!!」
耳元で聞こえた声に相澤は後ろを振り向いた。
真っ黒な炎に包まれ不気味に白く光る眼をした"何か"が相澤をじっと見つめている。
『オマエよりヒーローに向いているんだろ。だったらその身体、渡せよ』
「な、にを……」
『中途半端でその場で二の足踏む事しかできないくせに。もっと早くオマエが事件を解決していたら、あんなことにならなかったかもしれないのにな。救かったかもしれないのにな。かわいそうに』
黒い炎は楽しそうに嬉しそうに軽快に笑う。
戯言だと言い聞かせるが、化け物の言葉は蛇のように相澤の内側へ入り込み、"弱さ"をこじ開ける。
誰にも触れさせなかった、見せもしなかった柔らかい部分。
曝け出された今、相澤の精神は崩壊への道へと進んでいく。
「俺の……おれの、せいだ……。おれのせいで白雲が……」
『そうだよ、お前のせいで死んだんだ。それなのに、お前はのうのうと生きててあまつさえヒーローを目指してるなんて、ひどいと思わないか?』
冷たい雨に打たれながら相澤は、水溜まりに映る自分の顔を見つめた。
なんてひどく醜い顔だ。
こんな人間がヒーローを夢見ているなんて。
「『オマエの"力"じゃヒーローにはなれないよ』」
化け物と声が重なった。
刹那、相澤は糸が切れた操り人形のように地面に倒れ込んだ。
ぼんやりとする視界の中、ナイフみたいな化け物の笑い声だけが聞こえたが、それも少しづつ遠のいていく。
そして、相澤の意識はプツンと途切れ暗い闇の中へと落ちて行った。