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【雑多】いつかどこかで【短編集】

第20章 【ヒロアカ】Who killed Cock Robin【2】






「白雲……お前、なんで……。だって、お前は死んだはず……」
「ひっでー!!その冗談はきついぜ、消太!!」

白雲が少し強く相澤の肩を小突いた。
いつもならよろけることなんてないが、力の入っていない今の身体はいとも簡単によろけそのまま尻餅をついてしまう。
反射的に目を瞑ってしまった。
臀部に広がる痛みを感じながらも彼ははっと顔をあげる。
瞬間、相澤は再び自分の目を疑った。

先ほどまで真っ暗な闇が広がる体育館だったはずだ。
しかし今広がる光景は、かつての校舎かつての教室だった。
血に塗れた空間などどこにもなく、身に着けていたヒーローコスチュームは制服へと変わっている。
もう戻れない"あの日"の情景が相澤の身体を文字通り包み込んだ。

窓の外から零れる真っ赤な夕日。
誰もいない放課後、他愛ない話で盛り上がった。
好きな人の話、勉強の話、将来の話。
いくら話しても話しても話したりなくて、あっという間に過ぎていった魔法のような時間。
懐かしさや寂しさが相澤の胸に溢れて瞳が潤んでしまう。

「消太?どうしたよ。今日のオマエ変じゃね?」
「あ、いや……なんでも」

顔を覗き込んでくる白雲をまともに見ることができる相澤は視線を逸らしてしまうが、白雲はそれをあまり気にしている様子はなかった。
机に腰を掛けると窓から見える燃えるような赤い夕焼け空を眺め「俺とひざしと消太の3人で絶対に事務所作ろうな」と呟いた。
在学中は夢物語だと思っていた。
だけど、この3人なら何でもできると何でも解決できると根拠のない不確かな自身もあった。

「そうだな。なろうぜ……ヒーローに。俺と山田と、白雲。お前の3人で」

本気でそうなる未来を信じていた。
白雲は恥ずかしそうに、だけどどこか誇らしげな表情で満面の笑みで笑った。



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