第27章 【石神千空】Umbrella
放課後。
いつも通りの帰り道。
傘を開いて隣を見るがそこに彼女はいない。
当たり前だ。
彼女は転校したんだ。
ぱしゃんと水たまりを踏む。
彼女と歩いた帰り道を一人で歩く。
赤色タイルを見つけた。
赤色のタイルだけを踏んで、すぐにやめた。
全然楽しくない。
マンホールの上に立った。
くるりくるくると踊る彼女の姿はどこにもなくて。
必死に抑えていたものが一気に溢れ出す。
俺は傘を投げ捨てた。
顔を手で覆い溢れる涙を抑えようとするが、堪えきれず涙は頬を伝う。
ここに、この場所に、俺の隣に、がいないってだけで、どうしてこんなにも景色が滲んで見えるのだろう。
俺は、泣き続けた。
ずっとずっと。