第27章 【石神千空】Umbrella
「誰が誰に迷惑してるって?」
気づいたら、扉を開けていた。
驚いた彼女たちは目を泳がせ言葉を詰まらせていたが、何を言ったところで聞く耳なんて持つわけもない。
床に座り込んで鼻血を垂らしているに手を伸ばし「大丈夫か」と声を掛けると小さくだが頷いた。
その手を取って無理やり立たせ、俺は彼女を連れて教室を出ていった。
授業に出る気にはなれなかった。
学校にいる気にも。
荷物を全て教室に置いたまま、俺は彼女の手を握り学校を後にした。
家に帰るまでの間、俺もも何も言わなかった。
何も言えなかった。
彼女の顔を見る事すらできず長い沈黙だけが俺達の間に流れる。
俺が原因でがいじめられているのなら、一緒に居ない方がいいのかもしれない。
彼女を傷つけるくらいなら。
そう考えたが、遠ざけることの方が彼女を傷つける可能性もあると思った。
拒絶をしてしまったら、手を離してしまったら取り返しのつかないような、そんな感じがした。
その時、ぽつりぽつりと雨が降って来た。
次第にそれは強さを増し、地面を濡らしていく。
何も持っていない俺達はただ雨に濡れるしかなかった。
「びしょ濡れだな」
「うん、ふふ、懐かしいね」
は小さく笑ってみせた。
なぁ。
お前は今どんな気持ちなんだ?
お前の胸の内はどんなふうになってんだ。
苦しいんじゃないのか。
辛いんじゃないのか。
泣きたいんじゃないのか。
どうしてそんなふうに無理して笑うんだ。
沈黙がいつもより耳元で騒いでうるさい。