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【雑多】be there【短編集】

第27章 【石神千空】Umbrella







は人の傷みにとても敏感で、そして自分の傷みを我慢する人だ。
それに気づいたのは彼女と仲良くなって間もない頃。
人の傷みと言うのは精神面での話で、人の言葉がナイフのような鋭さを持ち合わせているのを嫌と知っている。

「言葉ってね消えないんだよ。ずっとその人の心の中で生き続けるの。消しゴムとか修正液なんかじゃ消えないの。絶対。だからね人は人の言葉で喜んだり傷ついたりするんだよ。言葉って怖いね」

いつだったか彼女はそんなことを言っていた。
その言葉が俺の心に刺さって、彼女の言っている意味がとてもよくわかった。

なぜ彼女のこの言葉が今思い出されているか。
それは目の前の光景に答えがある。
は、複数の女子生徒に暴力と心無い言葉のナイフを突きつけられていた。

「うざい」
「キモい」
「消えろ」
「死ね」

肉体的にも精神的にも彼女は今、深い傷を負わされている。

それはたまたまだったのだ。
どんよりとした曇り空を窓から眺め、雨降らねえかななんて考えながら購買でパンを買っていた時だった。
血相を変えた杠が俺の所にきた。
どうした、と聞くとと共に数人の女子生徒が使われていない教室に入っていくのを見たという。

それが大樹や杠であれば「友達と昼飯か」と思っただろう。
だけどの場合はそう言う考えには至らなかった。
あいつが俺以外の人間と話しているところなんて一度も見たことなかったから。
嫌な予感がした。
そして嫌な予感というものは大体当たってしまい、今に至る。

「千空くんが優しいから、あんたみたいな性格悪い女とも仲良くしてあげてんだよ。何勘違いしてるか知らないけど調子乗んなブス」
「千空くんだって迷惑してるって言ってたよ。めんどくさいって。疲れるって」
「ほら、だから言ったじゃん。あんたは邪魔なんだよ。邪魔な奴はさっさと消えるか死ね」

やめろ。
俺はそんなこと一度も思っていない。
俺はそんなこと一度も言っていない。
やめろ。
それ以上を傷つけんな。



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