第19章 【呪術廻戦】DOOR【0】
話しをするように促された男は、ゆっくりと口を開き淡々と夢の内容を語った。
「女性の方と手を繋いで、ずっと歩いているんです」
ずっと、ずっと歩いている夢。
歩きながらお互いの思い出を話している夢。
たったそれだけの夢。
なんのおもしろみもない夢の話に、4人はそれぞれの言葉で感想を述べた。
「羨ましいです」
「すてきです」
「いいですね」
「実は、私も同じような夢をみました」
オレンジ頭の女の言葉に、4人の視線は男ではなく女の方へと向く。
自分と同じ夢を見た、という共通点に無機質だったピンク頭の男の声色が少しだけ音をあげた。
「同じような」
「はい、私は立ち止まって彼と昔の話をしていました」
「なるほど。でも、私は歩いていました」
「私は立ち止まっていました」
「ふたりで似たような夢を見たんですね」
団子頭の男が、楽しそうに嬉しそうに羨ましそうに少しだけ口元を緩める。
その表情はまるで子供の成長を見守るような。
「あ、先生がいらっしゃったぞ」
白い頭の男がそう言った。
直後、一斉に4つの顔が入り口の扉へと向けられる。
どこか、何かを待っているような、そんな表情を浮かべる彼ら。
10個の視線を向けられた白衣の女は、大きく息を吸って扉のドアノブをゆっくりと回した。
音もなく開く扉。
その向こう側は、"外側"の世界とはまるで別世界のような空気が流れていた。
異様とも思える異質さを放った空間に、白衣の女はなんの躊躇いもなく足を踏み入れたのだった。