第27章 【石神千空】Umbrella
街灯の下、二つの笑い声が響く。
傘を地面に捨てて、マンホールの上に立つ俺ら。
だけど、小さな円に二人は乗れなくて体格的に小さいがバランスを崩す。
その腕を咄嗟にひいて、自分の方へ抱き寄せた。
自然とを抱きしめる形になって、急激に顔に血が上った。
思ったよりも小さくて、思ったよりも柔らかい体には女なんだってことが急に意識されてしまったから。
「わ、悪い!!」
「なんで謝るの?」
「……それは」
言葉を濁す。
確かになんで謝っているんだ。
別に悪いことしてないのに。
だけど、なんか、謝らないといけない気がするのもどうしてなんだ。
すると、隣でくすくすと笑う声が聞こえて「なんだよ」と聞いた。
「だってすっごい心臓がドキドキってしてて面白かった」
また顔に血が上った。
仕方ねえだろ。
俺だって男だ。
しかも思春期で、女をああいう風に抱きしめたことなんて一度もないし、お前が女だって意識しちまったし、そう考えたら毎日一緒に帰っている俺達はまるで……。
そんなことを考えていたけど、目の前でおかしそうに笑う彼女を見ていたらなんかばからしくなって、一緒に笑った。
「じゃあ、また明日ね」
「あぁ、また明日な」
こうして俺達は別れる。
それが毎日の日課。