第27章 【石神千空】Umbrella
と話すようになってから彼女は何かと俺に声をかけるようになった。
話す内容は実にどうでもいい話ばかり。
今日の朝ご飯だとか、今日見た夢の話だとか、本当にくだらない話。
彼女と一緒にいるようになってから気が付いたことがある。
彼女はあれ以来、雨に濡れることはなかった。
それはまあ当然だ。
雨の日は必ず彼女の家に行って一緒に登校しているから。
そして帰りは一緒に帰る。
天気が晴れていれば肩を並べて。
天気が曇っていれば「雨降るといいね」って言って。
天気が雨の日は傘を差して楽しそうに笑って。
俺は部活があったけど、彼女は待ってくれていた。
教室で歌を歌っていたり、廊下でダンスの公演をしていたり、時間を潰して。
「帰んぞ」
「うん」
この日も雨が降っていた。
一つの傘に、肩を並べる。
これが、俺達二人の「普通」になっていった。
教室では俺とは腫れもの扱いだ。
誰も近づいてこない、話してこない。
それでいいとさえ最近思い始めている。
なぜなら彼女と一緒にいるのが楽しいからだ。
クラスの中にいるより、何倍も何十倍も。
なんでかはわからない。
「赤色タイル発見!!」
の声が俺の耳に響く。
その合図で赤色のタイルを踏むだけのゲームが始まる。
毎日の日課になりつつある。
飽きるなんてことはなかった。