第18章 【釘崎野薔薇】ショッピング
「帰りましょう」
「そうだね」
二人席を立って、高専へ続く道を歩く。
「そうだ、はいこれ」
「なにこれ」
「今日のお詫び」
「これって、アイシャドウ?……リップ買うって嘘だったの?」
「うん。野薔薇っちゃんそれ欲しそうにしてたから」
「のそう言うところズルいと思うんだけど!!」
歩きながら、彼女はプレゼント用に包装されたラッピングを綺麗にはがす。
そしてずっと見ていたアイシャドウを目にして今にも叫びそうな勢いで、大きく口を開いたかと思うと、右手で押さえた。
「マジで⁉めっちゃ嬉しい!!」
「よかった~」
「が男なら絶対付き合ってた!!」
白い歯を見せる無邪気に笑う彼女は嬉しそうにスキップをしてはしゃぐ。
夕日に照らされた彼女の後ろ姿は、まるで子供みたい。
私が男なら、か……。
私が男なら今この場で告白でもしたのだろうか。
もし私が本当に男だったなら、野薔薇っちゃんは本当に私と付き合ってくれるのだろうか。
結局、男だろうと女だろうと、どちらにせよ。
私は野薔薇っちゃんと"付き合う"ことはないんだろうな。
「好きだよ、」
小さく零れた言葉は、彼女にはとどかない。
遠く離れた野薔薇っちゃんが大きく手を振っている。
私は小さく笑みを零して彼女の元へと走った。