第27章 【石神千空】Umbrella
「家、どこだ?送る」
歩きながらそう聞けば、は素直に答える。
その場所は俺の家と同じ方向だった。
「明日から雨の日は一緒に帰るか。毎日雨に打たれたら風邪ひくだろ」
なんでそんなことを言ったのかわからない。
だけど口が勝手に動いていた。
彼女は大きな瞳を更に大きくして俺の顔を見る。
だんだん照れくさくなってきてそっぽを向いた。
そこから会話は何もなくて、だけど嫌な心地なんて一切ない。
しばらく歩いていると、隣から小さなくしゃみが聞こえた。
ついでに鼻水を啜る音も。
俺は軽くため息を吐いてカバンの中からハンカチを渡す。
「……ありがと」
今度は素直にそれを受け取って、濡れた手や顔などを拭き始める。
その間、その場所に立ち止まって彼女を見つめる。
「洗った方がいい?」
「いや、いい」
「わかった」
濡れたハンカチをかばんにしまい、二人また歩き出す。
「ねえ!!」
歩きはじめて草々、は何かに気が付いたかのように前方を指さす。
どうした、と聞けば彼女は言った。
「色違いのタイルがあるんだよ!!」
彼女が指さす地面には赤と白のタイルが無造作に散りばめられている。
色違いのタイルがあることくらい知ってる。
毎日この道を通ってるんだから。
それがどうかしたのか?