第27章 【石神千空】Umbrella
自分の教室へ行き、自分の席に着く。
朝のHRが始まるまであと20分もあるな。
何をするわけでもなく頬杖をついて窓の外を眺める。
雨はやむことなく降り続ける。
ガヤガヤとクラスの人たちの声をBGMにしていると、その声がシンと静まりかえった。
どうしたのかと思い顔を上げると、クラスの目は一点に集中していた。
教室の扉、そこに先ほど雨の中で踊っていた女子が立っていた。
びしょ濡れになった制服。
頭から滴る雫。
その異様な光景に誰も何も言えない。
彼女は自分の席に鞄を置くと、その中から一枚のタオルを出して頭を拭きはじめる。
その次に腕、足と順番に拭いていく。
拭き終わったらタオルは鞄の中へしまい込み、代わりにジャージを取り出して着替えはじめた。
「ねえ、あの子がそうなの?」
「雨が降るといつもこうだよ」
「頭おかしいんじゃねえの」
「一緒のクラスとかまじないわ」
ひそひそとした話し声は教室中に広がる。
去年、彼女と同じクラスだった生徒に言わせると、雨が降っても傘を差さずに濡れて教室に入ってくるのだそうだ。
その度に制服からジャージに着替えるのだという。