第18章 【釘崎野薔薇】ショッピング
にやけてしまいそうな顔を隠そうと視線を下に降ろした時、彼女が見ていたもう一つのアイシャドウが目に入った。
深みの強い色はあまり野薔薇っちゃんに似合うとは思えなくてつい彼女に似合う色を言っちゃったけど、本当はこの色が欲しかったんだよね。
野薔薇っちゃんはまだ会計している。
私は、深みのあるネイビー色のアイシャドウを手にした。
「お待たせ」
「野薔薇っちゃん、私もリップ買うから待ってて」
「りょ」
リップを買うと言うのは嘘。
私は気づかれないように手の中に隠してレジへとそれを持って行った。
「プレゼント用でお願いします」
「かしこまりました」
包装してもらっている間、店の外で待つ野薔薇っちゃんを見る。
スマホをいじってる顔を隠すようにオレンジ色の髪の毛が垂れ、それを指ですくうと耳にかけた。
ただそれだけのことなのに。
特別な仕草でもなんでもないはずなのに。
一連の動作が妖美で美しく、どうしようもない私の心をくすぐる。
綺麗だな。
「お待たせしました」
「あ、ありがとうございます~」
見惚れていた私の耳に店員さんの声が聞こえ、慌てて紙袋を受け取った。
勢いで買ってしまったけど、これ野薔薇っちゃんに渡すのか。
いや、友達としてなんだから不自然なことなんてなにひとつとしてないよ。
ない、はずなんだけどなぁ。
小さな紙袋に入った小さなプレゼント。
今すぐに渡せる勇気はなくて、私は鞄の中にしまった。