第27章 【石神千空】Umbrella
中学2年の時、同じクラスに半年ほどだが変わった女の子がいた。
。
そいつは普通の人と比べると少しだけ変わっていた。
どう変わっていたか。
例えば、パチンコ屋の鏡張りの柱の前でダンスのソロライブを公演したり。
例えば、何もない空間を見つめそいつにだけ見えている何かを鷲掴みして頬張って食べたり。
全部杠から聞いた話だ。
その中でも俺の印象に残っているのは、雨の日は傘を差さないということ。
小雨だろうと大雨だろうと、そいつは傘を差さずくるりくるくると両手を広げて踊っている。
初めてそれをめにしたのは、2年に進級して間もない4月のこと。
始業式の日、しとしとと雨が降っていた。
大きめのビニール傘を差して玄関へ向かう途中、グラウンドをふと見た。
くるりくるくる。
両手を広げて、楽しそうに踊っている女子がそこにいた。
びしょ濡れになる制服なんて気にも留めず、そいつはひたすら回り続けていた。
俺はその時、何も見なかったことにしてスルーをした。
関わるのがめんどうだと思ったから。
そもそも雨の中傘も差さないで回り続けている人間に誰が声をかけてるというのか。
そう思う人間は、きっと優しい人間か面白半分の人間のどっちかだ。