第25章 【釘崎野薔薇】そのわけを
それでも自分が今何を思っているのかだけは、知ってほしい。
がそう思い、口を開こうとした時だった。
「好き。のことが好きなの」
嗚咽交じりに、とても小さな声で、野薔薇が言った。
「好きで、ごめん……」
謝ることないよ。
好きになってくれてありがとう。
そう言えたならどんなに良かっただろう。
「……うん」
上手く言葉にできず、は目の前で泣いている野薔薇を抱きしめることしかできなかった。
人を好きになった。
そんなごく当たり前で単純で普通のことなのに。
なぜ、こんなにも苦しくなるんだろう。
「野薔薇」
「なに」
「野薔薇の気持ちに今すぐは答えられない。でも、ちゃんと考えるから。ちゃんと気持ち伝えるから。だから、それまで待ってて」
「別に律儀に答えなくてもいいのに」
「ううん。本気の気持ちには本気で答えるよ。じゃないと、私が私を許せない」
「あんたのそういうところ、本当に好きよ」
にこりと笑った野薔薇の瞳から一筋の涙が溢れた。