第25章 【釘崎野薔薇】そのわけを
視線の先の野薔薇は今にも泣きだしそうな顔をしている。
いつも芯が強く自分を持っている野薔薇のこんな表情を見るのは初めてだった。
憧れている女の子だから、の胸も締め付けられるように痛み、自然と涙が溢れてしまう。
「ご、めん。……。あんたのこと泣かせたいわけじゃ……」
「ちが、違うの……。これはそういう涙じゃなくて……だって、野薔薇が……」
「ごめん……。本当に、酷いことをしたと思ってる……」
気づいたら野薔薇も涙を流していた。
言葉にしなくてももう頭ではわかっている。
野薔薇はのことを恋愛的な意味で好きなのだと。
それを誰にも言えずに苦しんでいたんだと、今、彼女の顔を見てわかった。
「私も、ごめん……。本当は起きてた。あの時、教室で……」
「うそ、でしょ……」
「本当。でも怖かった。確かめるのが。もしそれを言ったら野薔薇と友達でいられなくなるんじゃないかって」
「バカね、そんなのあんたが気にすることでもないのに。私が、勝手に私があんなこと……」
大粒の涙を零して何度も謝る野薔薇になんと声を掛ければいいかわからない。
突き放すことも受けとめることもできない。
彼女の思いを、彼女自身を、傷つけずに、どう言葉を紡げばいいのだろう。