第17章 【爆豪勝己】触れたい、確かめたい。
あの頃と何も変わらない私の部屋を見て「なんも変わってねえのな」とどこか嬉しそうな爆豪の声が響いた。
そんな彼の背中に「後で彼女さんに謝っておいて」と変な誤解をされないためにそう言うと、不思議そうな顔で見つめられた。
「彼女?誰のだ」
「爆豪さんのですよ。熱愛報道出ていたじゃないですか」
「なんで敬語だ」
自分で言っておいて傷つくとか……。
とりあえず気を紛らわせようとコーヒーを淹れる為キッチンに立つと、後ろから急に抱きしめられた。
持っていたコーヒーカップを落としそうになったけど、それどころの話じゃない。
爆豪の髪の毛が顔に触れ、爆豪の息が耳にかかり、爆豪の体温が身体全体を包み込む。
「ば、ばばばばばくごう!?」
「うるせえ、黙れ」
「いやまってよ、だめだよこんなの。彼女さんいるのにこんなの……」
「俺に彼女はいねえよ。あれはデマだ。信じんな」
私を抱きしめる力がぎゅっと強くなった。
デマ……?
あの女優とは付き合っていないということ?
動きと思考が停止する中、爆豪が私の首筋に顔を埋める。
それがくすぐったくて「ん、」と小さな息が漏れた、
恥ずかしさのあまり、肘で彼の身体を押すと案外すんなりと引き剥がされた。
「顔真っ赤。期待してんのか?」
「し、してない!」
「嘘つくの下手だな、本当に」
喉を鳴らして笑う彼はきっと私の全てをお見通しなんだろう。
ひとしきり笑ったあと、爆豪は真面目な顔をして「俺の話だ」と切り出した。
キッチンで立ち話もなんだからと、コーヒーを淹れ居間へ行き二人ソファに座る。
熱く苦いコーヒーの味が喉を潤したことで、幾分か冷静になってきた。