第17章 【爆豪勝己】触れたい、確かめたい。
「爆豪?」
電話の向こうから声がしない。
何か思い悩んでいて言葉にできないとか?
聞こえるのは、車の走行音や雑踏の音ばかり。
もしかして電波が悪い?
いや、だとしたら環境音なんて聞こえないよね。
なんて思っていると、インターホンが鳴った。
「爆豪、ごめん。インターホン鳴ったから出てくる」
聞こえてるかどうかわからないけど、取り合えず伝えるだけ伝え、私は玄関に向かった。
「なにか荷物頼んだかな、頼んだ覚えないんだけどな」
独り言を喋りながら玄関の側に備え付けてあるドアホンを覗き込み、そして目を大きく目を見開いた。
「え、なんで……?」
家の前に立っていたのは、今まさに電話している最中の人、爆豪だった。
「爆豪、どうして……」
「とりあえずドア開けろ」
電話とドアホンから重なる声。
混乱する中、私は玄関の扉を開けた。
眉間に皺を寄せた爆豪がそこにいて、私は金魚のように口をパクパクするだけで精一杯だった。
「ど、な、え……?爆豪???なんで?え??」
「俺の話も聞けってさっき言ったろ」
「いや、それは、そうなんだけど……電話の意味……」
「電話じゃ話せないことだ」
彼は「入っていいか?」と聞くも既に靴を脱ぎ始めている。
いいよ、なんて言っていないだけど拒否権はどうやらないらしい。