第3章 【爆豪勝己】盲目をつきやぶれ
結論から言ってしまえば。
男を捕まえるのに時間はそうそうかからなかった。
囮としての役割はあったのかとか、学生を護衛に回す程の事件だったのかとか、いろんな思考が巡り巡ったが、それは結果論であり、目の前の男は連続殺人事件の犯人なのは紛れもない事実だ。
警察に引き取られていく男を横目で見ながら、地面に座り込んでいる女性に声を掛けた。
「怪我とかしてませんか?」
「は、はい……。あの、私一体何が……、何も覚えてなくて……」
「とりあえず病院で検査だけしましょう。何か異常があるかもしれないので。事情はその時に警察の方から説明があると思います」
記憶障害、ではないと思うが意思を支配されていたのだとしたら後遺症があるかもしれない。
何も異常がない事を確認するほうが優先だ。
「あの女性、助かってよかったですね」
「たまたまあいつが犯行を行う現場を発見できたのが大きいね。じゃなきゃあの人は犠牲になっていたと思うから」
「俺、初めて知ったんですけど、炎系の"個性"じゃないんですね」
現場検証などで騒々しくなる場でショートが呑気な事を口にした。
確かにエンデヴァー事務所には炎系の"個性"を持った人がたくさんいるけけど、キドウさんのような人もたくさんいる。
「私の個性は"文字を具現化"すること。ペンと紙と私のイメージさえあればなんでも作れるよ」
「イメージが乏しいと乏しいものしか作れねぇってことか」
「そういうことだけど、もう少し言葉を選ぼうかバクゴー」
殴りたい衝動に駆られたが公衆の面前だ、耐えろ、耐えるのだ。