第17章 【爆豪勝己】触れたい、確かめたい。
だが、そんな意思に反して気づいたら電話をかけていた。
最悪だ……なんて頭で分かっていながら切ろうとしない自分の浅ましさに呆れた笑みが零れる。
鳴り続くコール音。
忙しいのかな、彼女さんと過ごしているのかな。
次のコールで出なかったら切ろう。
そう思った時だった。
「なんだよ」
耳元で爆豪の低い声が聞こえた。
ずくんと腹の奥が鉛のように重くなって、指先から血の気が引いて震える。
ああ、好きだ。
爆豪が好き。
今でもあなたのことが。
自分から別れを切り出したのに。
本当はずっとずっと好きでいた。
なんて自分勝手でわがままで卑しいんだろう。
「どうした?なんかあったんか?」
そんな私とは裏腹に爆豪の優しい声が響く。
久し振りに爆豪の声を聴いた。
それだけで涙が溢れる、気持ちが溢れる。
「ご、ごめん。間違った」
だから、私は嘘をついた。
できるだけ平然とした様子で、涙で濡れた声を悟られないように。
でもきっと彼は気づいているだろう。
だって爆豪は聡明で人の気持ちに気づける繊細な心の持ち主だから。
それに、間違い電話だと言いながら一向に電話を切ろうとしない私の矛盾した行動を怪しく思っているだろうし。