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【雑多】be there【短編集】

第23章 【呪術廻戦】DOOR【5】







ニュースでは人質の安否の心配をするキャスターの声が流れる。
警察は何度も犯人に大人しく投降するようにと呼びかける。
人々はただただこの事件の行く末を見守り続ける。
状況は依然として不明なまま心臓を冷やす緊張だけが続いていた。

警察の到着に、硝子は何を思ったのか。
外ではどんな風に騒がれているか知らないが、拳銃を手にし人を脅して銀行の金で逃げようとした。
それはつまり銀行強盗がやったことと同じ。
逃げる気はさらさらなかったが、一時の感情で何もかもが崩れ、拳銃を静かに降ろし、小さな声で語り始めた。

「若い頃は働くのが嫌いだった。なんのために働くのか。自分の自由な時間はいつ取れるのか。辛い仕事、人間関係、早く定年退職したいと思っていた。だけど、定年を間近に迎えるとそれすら臆病になっていた。仕事を辞めてその後毎日どうするのか。今まで粗末に扱ってきた労働は、もうすっかり自分だけの世界を築いてしまっていた。私は定年後、一体何をして生きていけばいいのか。私の相手は一体誰がしてくれるのか。私の今の気持ちはまるで、どこかに逃げ出したい中学生のような。私は逃げ場所を探し求めている」

そう言った証拠は、再び拳銃を構えた。
甚爾は直哉に人質である伏黒を連れて先に逃げろと指示を出した。

「動くな!!」
「慣れてねえ武器を使うんじゃねえよ‼」

甚爾はそう言うと、どこに隠し持っていたのか拳銃を硝子に突きつけた。

「おい、そいつ連れて表出て車かっぱらってこい」

何か言いたそうに口を開く直哉だったが、何も言わずに伏黒を連れて外へと逃げだした。
それを逃がすまいと硝子は拳銃の引き金に指をかける。
甚爾は二人の逃走を手助けするように出口を塞ぎ、そして。

乾いた音が鳴り響いた。




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