第23章 【呪術廻戦】DOOR【5】
何を思ったのか、硝子はもう一人の銀行犯である真希に銃口を突きつけた。
「何してんねん、アンタ!!」
直哉の鋭いツッコミが炸裂するも拳銃を構える姿勢は解かない。
「金をよこせ!!」
「支店長、何言ってんのよ⁉」
「伏黒君、真依さん、悪いね……。私は駄目な支店長だ」
せやろな、この状況見たら誰でも思うわ。
と、直哉は思ったが口には出さなかった。
硝子は言った。
この年になるまで何もなかったと。
地位も名誉も無ければ、子供もいないましてや結婚もしていないしもっと言うなら恋人だっていない。
きっかけがないままただただ生きていた。
もし、自分に何かきっかけがあれば何か変わっていたのかもしれない。
そう思う日々を過ごしていた。
「これが、私のきっかけだ……。私は今日、今までの私から抜け出すんだ……!!動くなああああああ!!金をよこせ!!!」
錯乱でもしたのかと錯覚するほど、普段の硝子からは考えられない行動に部下である伏黒も真依も困惑の色を隠せない。
馬鹿な真似だと言う事は硝子自身わかっていた。
分かっていたけど、それ以上に真剣だった。
きっかけを、今までの自分から脱却するきっかけはここしかないから。
ここを逃せば、また何もない日常が待っている。
そんなのは耐えられなかった。
「動くんじゃない!!!!」
その場にいる全員に銃口を突きつける硝子。
その時。
銀行の外から声が聞こえた。
「警察だ!!人質を解放し無駄な抵抗はやめて大人しく投降しなさい!!」