第17章 【爆豪勝己】触れたい、確かめたい。
「は?何言っとんだ、テメェ」
彼の目は大きく見開かれ、次第に吊り上がっていく。
私は唇を噛みしめ、静かに言葉を落とした。
「……私と、別れてほしい」
◆◆◆
爆豪勝己とは雄英高校で出会った。
私はB組だったから、たまに合同授業で一緒になるくらいで、それ以上の接触はほぼ皆無だった。
付き合うきっかけとなったのは意外にも物間のおかげ。
ことあるごとにA組につっかかる物間と売られた喧嘩は絶対に買う爆豪の相性がいいのか悪いのか、彼らがクラス全体を巻き込むため、気付けばA組の子達とも交流が増え仲良くなった。
その辺りから、粗暴な態度が目立つ爆豪が案外面倒見がよく驚くほど努力家なんだってことに気づき始めた。
才能マン才能マンって周りから持て囃されていても驕り高ぶったりせず、ひたすらに見据えた目標を達成しようとする姿勢にいつの間に彼の事を好きになっている自分がいた。
「爆豪のことが好き」
昼休みにA組の教室に行き、爆豪に告白をした。
一世一代の大勝負。
フラれることが大前提の人生はじめての告白。
告白されている爆豪はというとぽかんと口を開けていて、徐々に体が震えだした。
「テメェ、ここがどこだか分かってんのか?」
「A組の教室」
「なんで他の奴等がいる時に告白しとんだ!!」
「2人きりなんていかにもじゃん。そっちの方が恥ずかしくて口から心臓出ちゃうよ」
爆豪と仲のいい子たちはニヤニヤとした笑みを隠さずに私たちの様子をじろじろと見ていた。
他の子たちも気になるようで聞き耳を立てている。
ごめんね、爆豪。
私ズルい人間だから、逃げられない状況を作ったんだ。
2人きりが恥ずかしいとかそんなの建前だよ。
皆がいる前で告白をしたら、絶対に返事をしなくちゃいけないでしょ。
誤魔化したりなんてしないでしょ。
ごめんね、A組の子たちを利用しちゃって。