第23章 【呪術廻戦】DOOR【5】
小さな透明なポリ袋を見せつけるように、男の一人―――禪院直哉はそれを高く持ち上げた。
「これ、オマエらこれに見覚えあるやろ」
「ただのポリ袋じゃねえか」
「その中身や」
大きく上下に振ると、ちゃぷちゃぷと水音が聞こえた。
中に、水でも入っているのだろうか。
そう、誰しもの頭の中で考えた。
「アカンやん、忘れたら。知ってるはずやで」
そのなぞかけにも似たような言葉選びに、真っ先に気が付いたのは恵だった。
「まさか―――」
「そう、そのまさかだ」
今まで黙っていた唇に傷のあるガタイのいい男―――禪院甚爾はにやりと笑った。
彼等が手にしているポリ袋の中身。
それは、1995年3月20日午前7時30分。
地下鉄の電車の中でこの液体がばらまかれ、日本中は恐怖のどん底に突き落とされた。
それを彼らは手にしている。
中身が一体何なのか。
理解した瞬間に銃口を突き付けられた以上の恐怖が空気を震わせた。
銃を持っている真希でさえ、冷汗が全身に噴き出た。
「さぁ、銃を置いてもらおうやないか。俺達は」
「「銀行強盗だ」」
成す術もなく、真希は銃を捨て手を挙げた。