第16章 【ヒロアカ】Who killed Cock Robin【1】
「先生ー!!」
切島の叫ぶ声が響くだけで相澤の返事は返ってこない。
おかしい、あまりにも異常すぎる。
ここにきてから異変だらけなのに、目の前で人がいなくなるなんて。
動揺する気持ちを落ち着かせようと深呼吸を繰り返す心操は、隣でガタガタと身体を震わせる切島に気がついた。
「おい、大丈夫か?」
「上鳴の時と同じだ……。あいつも今みたいにいなくなって、俺の前からいなく……先生も上鳴と同じでいなくなって……」
ブツブツと同じことを繰り返し呟く切島に心操は、そう言えばと思い出す。
みんなと合流する前も切島は上鳴を探していた。
目の前で人がいなくなるのを2度も経験した彼の心的状態は不安定でまともでないことは嫌でもわかった。
「一旦A組の教室に戻ろう」
「はぁ?先生は?先生のこと、探さないとだめだろ。いなくなってんだぞ、今探さないと……上鳴だって見つけられてねえのに!!」
取り乱す上鳴は心操の胸倉を掴むが、すぐに手を離し「すまねえ、違うんだ。お前を責めてるわけじゃ……」と項垂れ唇を噛みしめる。
義理堅く人情に厚い彼の気持ちを考えると取り乱すのも分かる。