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【雑多】be there【短編集】

第23章 【呪術廻戦】DOOR【5】







「はわわわわわわそそそそんなこと言われちゃったりなんちゃったりしちゃったりしましても…………」

従業員と客を拘束されたこの状態を目の当たりし、酷くテンパる支店長―――家入硝子に、隣にいた従業員2名が声を掛ける。

「どうしよう、困っちゃうな……」
「支店長」
「どうしてこんな時に部長も課長もいないんだ」
「営業にでているからです」
「私もちょっと営業に出てこようかな」
「「支店長!!」」

あまりにも身勝手なその行動に2人は声を張り上げる。

「困ります、支店長。何とかしていただかないと」
と、冷静にそう言うのは従業員の一人―――伏黒恵。

「支店長、お願いします。支店長しか頼れる人がいません」
と、もう一人の従業員―――禪院真依がそう言った。

「伏黒君」
「はい」
「君、ここで働いて何年目かな」
「5年目です」
「そろそろだな。おめでとう、今日から君が支店長だ」
「支店長!!何をバカな事を言っているんですか!」
「冗談だよ」
「こんな時に冗談を言うのはやめてください。お客様もいるんですから」

真依の言葉に硝子は冷静に辺りを見渡した。
拘束され身動きの取れない彼らはずっと脅えている。
それを見て、自分が今できる最善の策を見失っていたことに気が付いた。

「何やってんだよ。警察が来る前にずらかんだから早くしな。下手な真似したら撃つからな」
「……わかった。なんとかしよう。要求額はいくらだ」
「素直じゃねえか。……2億だ」

2億。
その多額の金額に伏黒も真依も大きく目を見開いた。
ただ一人、硝子だけが静かに倉庫の鍵を取り出して、真依に手渡した。
彼等が今最も優先すべきことは従業員と客の命を守ること。
何十人といる命に比べれば2億という金額は、失ったとしても痛くも痒くもなかった。

真依は力強く頷くと倉庫へとまっすぐに向かって行った。





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