第16章 【ヒロアカ】Who killed Cock Robin【1】
切島と心操は自分たちの目を疑った。
確かに先ほどまで相澤と一緒に居たはずなのに、轟く陽気な音楽が流れた瞬間、何かに阻まれるように体育館から追い出された。
勢いよく押し出され、地面に尻餅をつき痛みで顔を歪ませる。
「……ってぇ~」
「何が起こってるんだ」
お尻をさすりながら立ち上がる心操は切島に手を差しだし「立てるか」と声を掛けた。
何が起こったのか整理はついていないが、その場に相澤の姿がないことに気がついた2人は顔を見合わせ体育館の扉を見つめる。
「先生、大丈夫っスか?」
切島は扉の向こうにいるであろう相澤に声を掛け扉を開けようとするがびくともしない。
「は?」
「どうしたんだ」
「あ、開かねぇ」
その言葉に心操の瞳が大きく見開かれ、切島と一緒に扉に手を掛けるが動く気配は微塵もなかった。
扉を強く叩いて何度も「先生!」と叫ぶが一向に返事が返ってくることはない。
「どうなってんだ!!」
「先生!!先生!!!!返事してくだい!!!!」
その時、カチリと小さな音が2人の耳に届いた。
その音は目の前の扉から聞こえたような気がして、得体の知れない恐怖に2人は生唾を飲み込んだ。
恐る恐ると扉に手を伸ばす切島。
びくりとも動かなかったそれは、嘘のように簡単に呆気なく錆びついた音を奏でてゆっくりと開いた。
「………っ!!」
「あ、いた……。意味がわかんねえ」
怖気づきそうになる気持ちをなんとか奮い立たせるも、それは虚勢でしかなく切島と心操の表情は引きつっている。
シン、と静まり返る体育館は人の気配など一つもしない。