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【雑多】be there【短編集】

第16章 【ヒロアカ】Who killed Cock Robin【1】






厨房にはいくつもの冷蔵庫や冷凍庫が並んでいる。
その一つ一つを開けては閉める。
中身はほとんど空っぽに近かった。
あったとしても調味料や油といったものばかりでどれも腹の足しにはならないどころか食べられるものではない。
飲み物もまた、白く濁っていたり黒く変色していたりと到底飲める代物ではなかった。

「チッ、全部だめじゃねえか」

予想はしていたとはいえ、やはり何もないとなると気分は落ち込んでしまう。
と、その時だった。
轟が「あったぞ」と声を掛けた。
冷凍庫の中を見つめる轟に3人は駆け寄り、そして言葉を飲んだ。
ひんやりとした冷気が身体を包み肌寒さを感じるが、寒さを感じたのがそれだけが理由じゃない。
冷凍庫の中は、ぎっしりと肉の塊が敷き詰められていた。
淡い赤色やピンク色に白い塊は、新鮮だと言わんばかりに彼らを見つめる。

「…………これって」

なんの肉なんでしょうか。

言いかけたがぐっとこらえ緑谷はそれ以上何も言わなかった。
嫌でも頭の中に浮かんでしまう、嫌な考え。
生臭い臭いが濃くなったような気さえする。
腹の奥から這い上がる異物感に緑谷は口元を抑え、なんとか我慢するが、気持ちはみんな同じだった。

どうするべきか、繰り返し繰り返し頭で自問自答するが答えなんて出てくるはずもない。
果たしてこれは食べられる肉なのだろうか、食べてもいいものなのだろうか。

「……得体の知れないものを口にするのは危険だ」
「そうだね」

結局、彼らは食材を手に入れることができないまま食堂を後にした。
腹の足しになればと思い、水だけでもと思っていたが蛇口からは錆びた茶色い水しか出てこなかった。
流し続けていれば透明な水に戻ると踏んでいた彼らだが、元に戻ることはなくそれどころか次第に水の勢いは弱まり、完全に止まってしまった。
何度捻ってもそれ以上水が出てくることはなく、落胆と苛立ちを抱えたまま、一度A組に戻ることを決めた。



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