第22章 【呪術廻戦】DOOR【4】
「さぁ、もうわかっただろう。君は一体どちらを選ぶんだい」
「オマエは一体……」
「私は君の中にある"真理のYES"。これでわかっただろう」
「…………いや、何もわからないんだが」
「本当に?本当に何もわからないのかい?」
真っ黒な"何か"の表情が、少しずつゆっくりと霧が晴れていくかのように剥がれていく。
その間にも"何か"は夏油に語り続ける。
「まだ気づかないのかい。忘れちゃったのかな。それともとぼけているのかい。私が君をここまで連れてきてやったのに。真実を認めずに立ち続ける君を。私がここまで導いてあげたんだ。私の名前は――――――」
"何か"の表情があと少しで見える。
その瞬間、眩い光が夏油を照らした。
あまりの眩しさに目を瞑る夏油。
次に目を開いた時、"何か"の表情はまた黒くなっていた。
「さぁ、選んでください。君はどちらを選ぶんだい?」
"何か"は、夏油の後ろにあった扉のノブに手を掛け勢いよく開けた。
扉の向こうには、一脚の椅子が鎮座していた。
4本の足が、夏油を見つめている。
「扉の向こうには何が見えますか。見つめてください」
夏油はゆっくりと振り返り、椅子を見つめる。
立ち続けるのか、それとも座るのか。
どちらの気持ちを選ぶのか。
それを選択するのは夏油自身。
そして、夏油が選んだ選択は――――――。
「アナタはやっと境界を越えました。また、立ち続けてください。アナタはまた"YES"を選ばなかった。また、ここからはじめてください」
それだけを言って、"何か"は夏油の前から姿を消した。
一人の残される夏油は、扉の向こうにある椅子を見つめる。
そしてゆっくりと扉に近づき、扉を静かに閉めた。