第22章 【呪術廻戦】DOOR【4】
「平気だと思っていたが、どうやら弱かったようだ。体調は悪くなるし仕事も手につかない。結局、無気力状態。生きていながら私は死んでいた。他にやることなんでもあったのに、他にやることがなんにもなかった。なんだかそんな感じがしたんだ。生きていて空しかった。それで……」
言葉尻を濁した。
"何か"は彼の顔を窺うように覗き込み「自殺、したんですか?」と問いかけた。
夏油はその問いかけに小さく笑みを零すと首を左右に振った。
「立ち続けることを諦めたんだ」
「そうですか」
「もういいだろう、私の話はここまでだ」
これ以上話すことは何もないと。
これ以上何かを聞いてくるのはやめろと。
そういう牽制をした。
それに夏油にはやるべきことがあった。
これから夏油はどうするべきなのかを考えなくてはいけなかった。
超えてはいけない扉を超えるべきなのか、今来たもうなくなっている道を戻るべきなのか。
それを考えなくては。
しかし、"何か"がその手を拒んだ。
夏油の手を引いて「アナタの話はまだ終わってません」と真っ黒な表情でそう言ってきた。
吸い込まれそうになるその真っ黒い顔に、夏油は思わず目を背ける。
それを感じてか"何か"は夏油の手を放し、まるで無邪気な子供のように彼の周りをくるくると回った。
「ひとつ、ヒントをあげましょう」
くるくると回っていた"何か"は、夏油の顔にその顔を近づける。
あと数ミリでキスしてしまいそうなその近距離に、思わず"何か"を突き飛ばした。
尻餅をついた"何か"は痛がる様子もなく、お尻をついた状態で夏油を見上げた。