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【雑多】いつかどこかで【短編集】

第15章 【吉野順平】寂しさを口ずさむ






そして数日後。
全校集会で体育館に集まっていた生徒たちは急に苦しみだし床に倒れた。
私もそのうちの一人。

苦し紛れに見た最後の光景は。
憎悪や嫌悪にまみれた表情をした吉野くんの姿だった。
そのまま意識はブラックアウトし、気づいた時には病院にいた。

病室のベッドに横たわり、ただ、窓から見える空に恋焦がれる。

吉野くんの担任だという太った男が私の病室を訪れた。
私が以前から彼と親交があったことを誰かから聞いたのかもしれない。

男は、吉野くんがいじめに遭っていたことを知っていた。
知っていながら知らないふりをした。
それを悔いて、罪を背負うだのなんだのと懺悔を私に言ってきた。

「……それを私に言ってなんになるんです?吉野くんに言うべきでしょう」
「それも、そうだな」
「人のこと言えませんけどね、私も」
「え?」
「聞きたくないことばかり聞こえる世界だから、私は聞かないように耳を塞いだ。見たくないものばかり見える世界だから、私は見ないように目を瞑った。それだけです」

彼がいじめに遭っていることを知っていたのに。
スーパーヒーローみたいに救ってやることはできなくても、彼の支えになれると、なれていると勘違いしていた。
あんなキス一つで。
彼の中に残る心の傷を、どうにかできるのではないかと。
そんなわけ、ないだろうに。



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