第22章 【呪術廻戦】DOOR【4】
「……ごめんなさい。私、戻って来ちゃった……っ」
いつもの高尚な喋り方ではなく、ごく普通の喋り方で謝る天内。
こういう時、こんな喋り方をするのは本当に反省をしている時だと夏油は知っている。
だから、夏油はその小さな身体を力強く抱きしめた。
天内の温もりを確かめるように、ここに天内がいると言うことを確認するように。
お互いに身体を離し、見つめ合い、静かに顔を近づけ、唇と唇が重なり合うその時。
天内はまるで泡のようにその姿を消した。
突然目の前で姿を消す天内を夏油はただ茫然と見つめていた。
そしてぽつりと。
「……夢だったんだ」
「夢?」
「帰りの電車の中でうとうとと眠ってしまっていたようなんだ。実際家に着いてみると、部屋は綺麗に掃除してあった。洗濯物も物干し竿にちゃんと干してあった。ドアのポストに外から入れたんだろう、部屋のスペアキーが玄関に転がっていたよ。……ただ、玄関の鍵は開けっぱなしだった」
「駄目じゃないか、それ……」
「……部屋の中にポツンといることに、ああ、これが現実なんだなってそう思ったよ」
がっかりが半分、どこかほっとしたのが半分。
夏油はそう言った。
これで本当に終わりなのだと。