第22章 【呪術廻戦】DOOR【4】
「私に選択の余地はなかった」
ぽつりと吐き出した言葉。
まるで誰かに話しかけているような独り言のような。
どちらともつかない声で彼はただ真っすぐに扉を見つめる。
「今来た道はもうない。そんな時、誰かが私に教えてくれればいいのに。……私は暫く考えた。やってきたのは一本道だ。分かれ道など見えなかった。一本道の終点までやってきて、そして私の目の前に扉があった」
例えるなら、エスカレーターの降りる直前で足踏みをする状態。
そんな状態で長い間考えていた。
考えていても一つの答えしか見いだせなかった。
「誰か、そっと私に教えてくれればいいのに」
静かに、自分に言い聞かせるように。
夏油はそう言った。
じっと目の前の白い扉を見つめ続け、唇を噛む。
「だけど、やっと私は決断したよ」
大きく息を吸って。吐いた。
そしてドアノブに手をかけ開けようとしたその瞬間。
「お話はよく聞かせてもらったよ」
どこからか声がした。
夏油はドアノブから手を放し、辺りを見渡す。
しかし自分以外の姿はどこにも見当たらない。
「………」
自分以外の姿はどこにも見当たらないはずだった。