第14章 【五条&七海】死んだ方がマシだった【R18】
七海の運転する車の助手席で、髪の毛を一つに束ねた女性が窓の外を眺めていた。
その首には絆創膏やガーゼなどが貼ってある。
弟を救うために五条の言いなりになり、会社を辞めて家も解約したと言う。
家族を助けるためとはいえ、誰にも相談せずに一人で全てを抱え込む女性に七海は慰めの言葉の一つや二つかけてやろうと思い口を開いた。
「さん、あなた、五条さんにあれだけされても平気なんですか?」
だが発せられた言葉は思っていたものとは180度違うもの。
「はい、平気です。私は、弟を見逃してもらう代わりに五条さんに自分を売ったんです」
「それは知っていますが……」
「あんな事をされるとは全然想像していませんでしたが。……正直結構キツいですけど。でも、五条さんには感謝しています。一千万とか私には全然つり合わないのに、我が儘聞いてくれて。だから受けた恩はちゃんと返さなきゃいけないんです」
例え、殺されたとしても。
死にたいと思うような拷問を受けたとしても。
外を眺めていたは七海を見つめた。
その瞳に、その覚悟に、七海は「そうですか」とだけ呟いてハンドルを強く握った。
会話のなくなった静かな車内はネオンの街を泳いでいった。