第3章 【爆豪勝己】盲目をつきやぶれ
頼むから、本当にさっさと大人になってヒーローになってくれますように。
今よりも身長が伸びて体格もよくなって、どんどん素敵な男性になってくれますように。
今どんな顔をしているのか、自分ではよくわからなかった。
ただ、バクゴーの赤い瞳がみるみる見開かれてそのまま止まっているであろうことはわかった。
隠さないと、と思うのに、心底驚いているバクゴーの顔は貴重で、目を離すのが勿体なかった。
だから、気持ちの赴くままに彼を眺め倒した。
炎のように紅い瞳で見る世界はどんなんだろう。
私が見る空よりも眩しく見えていたりするのだろうか。
自棄になって微笑むとちょうど店員が現れ「お時間終了30分前となりましたが」と声を掛けてくれた。
ああ、もうそんなに時間が経っていたのか。
私はデクとショートに向き直り、何か追加するか聞くと二人は首を横に振ったため、そのまま会計へと進んだ。
レジで会計をしている間、3人を外で待たせていたはずだったがなぜか隣にバクゴーがいた。
「どうしたの?」
「……」
「お金ならいらないよ、奢るって言ったでしょ」
何も喋らないバクゴーに首をかしげていると、ぽつりと小さい声で呟いた。
「なんでもできても、結局変わんねぇと思う」
一体何のことかと考えたが、それは一瞬のこと。
彼は先ほどの事をいっているのだ。
「俺が目指すのはNo.1ヒーローで上を目指すし、あんたはずっとエンデヴァーのサポートしながらヒーローを続けていくんだろうし。何回人生を繰り返したところで、結局今と同じだ」
この年下が、自分の半分ほどの年齢しか生きていない子どもが、年上のように見える時が何度かあった。
例えば今とか。
石の強い眼差しに射抜かれて呼吸が止まりそうになる。
私の驚きは外に漏れていたんだろう。
その証拠にバクゴーが意地の悪い笑みを見せた。
赤く燃えた瞳が細められ、唇は魅力的な悪魔のように美しく弧を描いた。