第14章 【五条&七海】死んだ方がマシだった【R18】
事務所もまた、その話で持ち切りだった。
『五条さんが地味で金にならなさそうな女を買った。どうする気なんだろう』
口を挟むことはしなかったが、七海も事務所にいた彼らと同じ思いだった。
「一千万でしょう?別に回収出来なかったからと言ってどうって事は無いですが……。他の連中にうるさく言われませんか。」
「言わせとけばいいじゃん。僕は当分あれで遊ぶつもりだから」
にぃ……と、唇を歪ませるだけの酷薄な笑みを浮かべる五条に、七海ももう特に言うことはない。
言い出したら聞かない、それが自分が仕えるこの男の性質だ。
一度しか見たことがないし会話もしたことがないという名の女性に同情してしまう。
五条が愉快げに遊ぶというからには、シャチがアシカを海面で投げ飛ばすように、文字通りなぶり者にされるに違いない。
前に向き直り、チラリとバックミラーで五条を窺う。
シートに浅く腰掛け、気だるそうにふんぞり返っているのは恐らく寝ていないからだろう。
柔らかめのワックスでセットした真っ白な頭髪、スキンケアで整えられた白く滑る様な肌は大人の色気がある。
今は閉じられている、あの酷薄で、冷徹で、冷酷な猛獣の色をした冷たい瞳。