第13章 【ヒロアカ】Who killed Cock Robin【0】
爆豪は、壁に着いた血を指でなぞった。
ザラリとした感触に眉を顰め、微かに付着したそれを指で擦った。
「血が乾いている。黒く変色しているところを見ると、昨日今日のもんじゃねえな」
「少なくともクラスの奴ではないことは確かだが、だとしたら一体誰のもんなんだ」
「そもそも雄英に侵入者が入ればアラームが鳴るし、先生たちが対処してくれると思うんだけど……」
さっきまで廃墟だったし。
緑谷の言葉に爆豪と轟は、得体の知れない雄英高校に身構えた。
そうだ、さっきまでここは廃墟で自分たちは雨宿りをしていただけ。
頭ではわかっている。
分かっているが、視界に入る光景が、情報が、ここは"本物の雄英"だと脳が勘違いを起こしそうになる。
他の奴等は、どうなった。
この場所が本物でも偽物でも爆豪はどっちでもよかった。
それより気になるのはクラスの人たちのことだ。
自分たちのクラスはもちろん、他のクラスや学年、先生たちのことが気がかりだ。
奇妙なこの空間に巻き込まれてはいないだろうか。
「……かっちゃん」
そこまで思い至った時、緑谷が爆豪の名を呼んだ。
横目で彼を見ると、大きな瞳を更に大きく見開き、唇はわなわなと震えている。
「……開かないんだ、窓が」
「は?」
「鍵は開いているのに、ピクリとも開かなくて……それに、"個性"が―――」
緑谷が何を言いたいのか、瞬時に理解した爆豪は"個性"を使おうとした―――が、爆破は起こらなかった。
掌の汗腺から汗を出すことはできる、しかし、それを爆発させることができない。
爆豪だけでなく、緑谷も轟も同じようで、3人の顔は焦りの色が滲む。