第3章 【爆豪勝己】盲目をつきやぶれ
「そういえば、かっちゃん。ブランケットの持ち主見つかったの?」
焼肉を食べ始めてしばらくたった頃、デクが思い出したように口を開いた。
初めこそデクに話しかけられて不機嫌そうに眉に皺を寄せたバクゴーだったが、ブランケット、という単語に開きかけた口を閉じた。
お皿の上に乗っかっている牛タンを眺めたあと、一瞬、バクゴーが私をちらりと見つめ視線がぶつかった。
しかしすぐに逸らされ、
「……さぁな」
「早く見つかるといいね」
「遺失物拾得物窓口に届けたんだろ?だったら取りに来た可能性もあるんじゃねえのか」
「そっか。それならよかった。タグがついたままだったって聞いてたから少し気になってたんだ」
安心したように笑うデク。
見ず知らず(持ち主は私だけど)の人のことまできにかけるなんて、なんていい子なんだろう。
そのあとも黙々とご飯を食べ続ける少年たち。
育ち盛りの胃袋はとても恐ろしいもので、いくら食べても食べ足りないのかずっと焼いては口に運んでいる。
私は既にお腹が苦しく早々に離脱し一人彼らの食事シーンを眺めているだけ。
「いいねぇ……」
思わず零れた自分の声にハッとしたが、小さな私の言葉は誰にも聞かれていないようだった。
ただ一人を除いて。
隣に座っていたバクゴーだけが私の声を聞いていた。
「君達と……君と、一緒だったらどんなに楽しかっただろうなって思っていただけだよ」
そう伝えると、胡散臭いものを見る目を投げてよこした。
「何言ってんだ、あんた」
窓の外は既に沈み、水色、藍色、紫、桃色、橙色、黄金、空は全ての美しい空の色を閉じ込めていた。
それでもきっとこんな暗闇の中でさえも、バクゴーの髪の色や瞳の色だけはきらきらと輝いているんだろうなと思ってしまった。
太陽のように目を焼くこの色は卑怯だ。
ただでさえ君は眩しいのに。