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【雑多】いつかどこかで【短編集】

第12章 【石神千空】プラネタリウム






震える彼の手を優しく包み込んで、頬をすり寄せた。
好き。
石神くんのことが好き。
3700年も前から。
隠してきた気持ちは、抑え込んでいた想いは、上手く言葉になってでてきてくれない。
その時、嗚咽を漏らすだけの私の身体はふいに引っ張られた。
引き寄せられた私の頬は石神くんの胸に当たった。
彼の腕が背中にまわり、強く抱きしめられる。
石神くんの体温と鼓動がダイレクトに伝わってきて、私もまた彼の背中に腕を回した。

お互いの鼓動と吐息がすぐそばにあって、すぐそばで感じる。
遠い存在だと思っていた人が、こんな近くにいる。
触れたいと思っていた人と、抱きしめあっている。
さっきまで泣きじゃくっていたのに、嘘のように落ち着きを取り戻した私は、彼の耳元で呟いた。

「私で、いいの?」
「がいい」

そっと身体を離して見つめ合う私達。
雰囲気的にきっとキス……をするんだろうなって頭ではわかっていたんだけど、長い間片想いをしていたから、好きな人とキスをするという行為に心の準備ができずに、私は彼の唇を掌で抑えてしまった。

「……おい」
「ち、違う。違うの……。嫌、とかじゃないの。むしろキス……はしたいんです。でもでもでも、心の準備が……」

両想いになれたことだけでも奇跡なのに、キスとか……。
心臓発作で死んじゃう。
ぐちゃぐちゃな頭の中は言い訳みたいな言葉の羅列を並べ立て、行き場のない両手はあたふたと宙を舞う。



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