第12章 【石神千空】プラネタリウム

「あんななんの価値もない玩具を大事そうに抱きしめてたお前を見て俺は、俺の大事にしているもんを大事にしてくれる奴がいるんだって知って、興味が湧いた」
「………えっと」
「学校の裏山で、百夜の名前出して無邪気に玩具で遊んでるお前を見て、泣きそうになった」
「…………………あ、はは。恥ずかしい、な」
「………もう、分かんだろ？」

私を見つめる石神くんの顔は赤く染まっているように見えた。
彼の瞳に宿る情熱が私にまで届き、顔が急激に熱くなる。
自惚れてもいいのかな。
もしかして石神くんは、私のこと―――。

「惚れてる。てめぇが好きだ、」

夢みたい。
ずっと大好きで憧れた人は、一生手の届かない場所にいる存在だと思っていた。
手を伸ばして届いたとしても、それは都合のいい妄想なんだと言い聞かせてきた。
叶いもしない願いを抱いていても、期待ばかりが大きくなって虚しくなるだけ。
だから、遠くから見つめてるだけでよかったのに。

「お前の気持ちを聞かせろ」
「私の、気持ち……」

声が勝手に震えてしまう。
視界は歪み、泣きたくないのにそれらはポロポロと瞳を飛び出して頬を濡らしていく。
ああ、こんなに泣いたら石神くんを困らせちゃう。
止め処なく溢れる涙を乱暴に両手でこすると、そっとその手を握られた。

「ゆっくりでいい。本音を聞かせてくれ」

石神くんの掌が私の頬に触れ、優しく涙の跡を拭った。
彼の掌はとても熱くて少し震えていて、緊張してるんだとそのときわかった。