第12章 【石神千空】プラネタリウム
そんな私の姿を見て、石神くんは眉尻を下げて幼い子供のような笑みを浮かべた。
「じゃあ、てめえの心の準備とやらができるまで今はこれで我慢してやるよ」
そう言うと、彼は私の左手を取ると薬指に優しく唇を寄せた。
声にならない叫びが夜の空気に溶けていく。
「な、な、な……っ!!」
「くくっ、茹でた蛸みてえだな」
「…………もしかして、慣れてらっしゃる?」
薬指にキスだなんて、仕草がプレイボーイだよ。
石神くんの事を知っていれば科学にしか興味のない人だとわかるけど、でも、これは、あまりにも……刺激が強いよ。
触れた薬指がジンジンと熱い。
「が俺の初恋だ」
口角をあげる石神くんを見て気づいた。
星明かりしかないのに、それでもわかるほど彼の耳は真っ赤になっている。
らしくないことまでして私に本音を伝えてくれた石神くんの気持ちを漸く実感し、嬉しさや切なさが襲ってきた。
私も、彼に返さなきゃ。
私の本音を、石神くんに伝えなきゃ。
「石神くん」
心臓は小さくだけどはっきり脈打って、ドキドキと、高鳴る。
石神くんに出会えてよかった。
石神くんを好きになってよかった。
あの時、勇気が無くて伝えることができなかった。
石神くんの気持ちが分からなくて怖がっていたけど、彼の気持ちを知った今はもう、何も怖いものなんてない。
「3700年前から、石神くんのことが好きです」