第12章 【石神千空】プラネタリウム
石神くんは、くちをもごもごと動かすだけ一向に話そうとしない。
こっちはもういろいろと覚悟を決めている。
なにを言われようと受け止める準備はできているんだ。
「なにか、悩み事でもあるの?」
だから私から切り出した。
石神くんはあからさまに動揺して、眉間に皺を更に寄せると静かに目を伏せた。
すると耳を澄まさないと聞き取れないほど小さな声で、彼は自分の気持ちを零した。
「俺は、誰かを好きになるなんて時間の無駄だと思ってた。恋愛に現を抜かして精神がすり減って、思考だってブレる。そんなもん非合理的で煩わしい感情で面倒なもんだと今までずっと思ってた」
彼が零す言葉一つ一つを私は黙って聞いた。
石神くんが何を言いたいのかは分からないけど、きっと石神くんは話しながら頭の中を整理しているんじゃないかなとなんとなく感じた。
「他人に心を動かされることなんかそうそうあるもんじゃねえ。だけど、あの日。プレゼント交換した日、覚えてるか」
プレゼント交換……。
中学2年の時の事を言っているのだろうか。
忘れるわけない。
あの二つの小さなフィギュアは大切な宝物なんだから。