第12章 【石神千空】プラネタリウム
数時間で完成したプラネタリウム。
無数の星たちが散りばめらたそれは、5.5畳の部屋を一瞬にして広大な宇宙へと変えた。
天井も床も壁もなくなった一面星空の世界には、5.5畳の片隅には、存在しない、ここにしかない、星がある。
私が作った、星。
それは消えそうなくらい儚く、だけど一番眩しく輝いている。
私は、その星に名前をつけた。
触れようとして手を伸ばしてみる。
届きそうで届かなくて、触れることはできないんだと諦めた。
でも、やっぱりどうしても触れてみたくて。
少しだけかかとをあげて爪先だけで立って、背を伸ばしてみた。
そうしたら、驚くほど容易く、簡単に、あっけなく、触れてしまった。
やめておけばよかった。
こんなに後悔することになるなんて。
だって、この星は彼じゃない。
私の夢でしかない。
本当の光には届くわけがないんだから。
消えてなんてくれないんだから。
「石神くん…………」
どうしたって、あなたに近づきたいと思ってしまう。
どうしたって、あなたに触れたいと思ってしまう。
小さく零れる涙の光を、あなたは知らない。
私しか知らない。
私だけにしか見えない。
5.5畳の宇宙は、窓を開けてしまえば現実が巡った。
何処を探しても実在しない星たちは見えない。
でも、探してしまうのは私の心が恋焦がれているから。
大丈夫。
窓を閉めればまた見れるから。
苦しくて悲しくて寂しい思いをするけど。
割りきって目の前の楽しいものを見つけるよ。
苦しくて悲しくて寂しい思いを繰り返すけど。
ここにいればあなたと過ごした儚くも楽しい時間はたしかに存在したんだって思いだせるから。