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【雑多】いつかどこかで【短編集】

第12章 【石神千空】プラネタリウム






杠ちゃんや大木くんは気兼ねなく言えただろうな。
あれだけ嬉しかったはずなのに、じんわりと視界が歪む。
涙はかろうじて睫毛の手前で止まり零れることはなかった。
鼻を啜って布団から這い出ると、部屋の隅におかれたカバンに目をやる。
あの中には渡せなかったプラネタリウムの手作りキットが入っている。
自分で作るオリジナルのプラネタリウム。
彼にあげようと思っていたけど、あげられなかった。

ゆっくりと立ち上がり、カバンの中からラッピングされたそれを取り出す。
羽は大きく結びめはふんわりと柔らかい緑色の蝶々が箱の中央で綺麗に結ばれている。
方っぽのリボンをゆっくりと引っ張れば、比例するように形が崩れ解けていく。

一つ一つ丁寧に。
決して汚くならないように慎重に剥がしていく。
そこからは早かった。
箱の中からぷらえタリウムのキットを取り出し、無我夢中で時間も忘れて作り上げる。
オリジナルのそれは自分で好きなように星を作ることができたから、彼と一緒に見た流星群を、夜空を、そこに散りばめた。
忘れたくなかったから、思い出として大切にしたかったから。
好きだと言う気持ちをなかったことにしたくなかったから。

頬を伝う透明な雫が何度も何度も零れ落ちるけど、気にも留めずにただただ必死になって私だけのプラネタリウムを完成させた。



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