第12章 【石神千空】プラネタリウム
あの後、どうやって家に帰ったかはあんまり覚えていない。
ただ、朝方まで石神くんと二人でいた事だけははっきりと覚えている。
お誕生日おめでとう、と言った時。
彼は少しだけ驚いた顔をしていたけど、そのあとは静かに笑っていた。
お礼の言葉はなかった。
けれど、別にそれが欲しいとは思わない。
だって、石神くんの口から素直に「ありがとう」と言われたら熱でもあるんじゃないかと疑ってしまうもん。
そうじゃなかったとしたら、そうじゃなかったとしても……変に期待することだけはしたくなかったから、石神くんの態度はとても安心できた。
家に帰ってからは泥のように眠った。
昼過ぎまでずっと寝ていた私は漸く目を覚まし、ぼんやりと窓の外を眺める。
さっきまで私は石神くんと二人で流星群を見ていた。
人一人分の距離があったとはいえ、お互いの息遣いは聞こえていた。
好きな人と近距離で長時間一緒に居たという現実が急に襲い掛かり、寝ぼけていた思考回路はショートしてしまい私はそのまま枕に顔を埋め足をばたつかせた。
「うわああああああああああ!!!!」
大きな声で叫んでも全ては枕に吸収されるから、近所迷惑にはならない。
だから私は気がすむまで叫んだ。
そうでもしないと、現実に脳が壊されてしまう。
杠ちゃん!!
これでも私頑張ったよ!!
お誕生日おめでとうって言えたよ!!
二人で流星群見て綺麗だねって言ったよ!!
すごく緊張して上手く喋れなかった時もあったし変なところ見られて恥ずかしい思いもしたけど、でも、一緒に誕生日を過ごせたよ!!
頑張ったでしょ!!!!
誕生日プレゼントは渡せなかったけど、渡すことができなかったけど、心残りではあるけど……、でも、私にしてはすごく勇気のあることをしたと思うんだ。