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【雑多】いつかどこかで【短編集】

第3章 【爆豪勝己】盲目をつきやぶれ






私は観察する。
エンデヴァーさんの速さに追いつこうと必死に藻掻く姿を。
エンデヴァーさんより早く敵ヴィランの確保を、エンデヴァーさんより早く人命の救助を。
息を切らしてヒーロースーツを汚して、ただ上を目指す。

ヒーローの卵と言えど、弱いはずがないのだ。
今は未熟で追いつけなくても、彼の潜在能力や戦闘能力は日に日に成長している。
普段の行いがアレだとしても、守ってやろうなどと、そんなふうに考える方がおかしいんだ。
そんなことを考える人間がいるとしたら確実に気が狂っている。
……言い過ぎか。
でも、そう思ってしまうほど、この庇護欲は一体どこからくるのだろう。

結果として。
今日のパトロールもまたほとんどエンデヴァーさん一人で片付いてしまった。
銀行強盗やひったくり、電車の脱線事故などなど。
気付いた時には既に解決しているのだから、私の出る幕がない。

ゆっくりと日が傾き始める。
事務所に戻れば、確保した敵ヴィランの報告書や始末書などの書類が山のように積み上げられている現状を見て私は顔を顰め、見なかったふりをしてインターン生に向き直る。

「お腹空かない?」
「え?」
「ご飯食べに行こう。私の奢りだよ」
「なぁに、仕事サボろうとしてんの?」

バーニンさんに頭をがしりと掴まれた。
違う、違うんです、バーニンさん。
お腹が空いてると仕事の効率が悪くなるじゃないですか、今はお腹を満たすべきなんです、彼等だってきっと空腹だと思うし、交流も兼ねて一緒に食べた方がいいと思っただけなんです、決して仕事をサボるための口実なんかじゃないんです。
そんな言い訳をつらつらと述べる私を憐れんだような瞳で見つめる学生たち。
ああ、やめて。
そんないたたまれないような、憐れむような、そんな顔で私を見るのはやめて。



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