第12章 【石神千空】プラネタリウム
「……今日は見れねえだろうな」
「明日か明後日がピークらしいもんね。今日は下見のつもりだったんだけど、思ったより時間経っちゃった」
「にしては用意周到じゃねえか。テントに寝袋、天体望遠鏡って。嘘付くの下手すぎんだろ」
「…………一応ね、ほら。もしかしたらって場合もあるじゃん」
バレバレの嘘は当然見破られる。
言い訳も下手くそだし、さっきからずっと恥ずかしいところしか見せてない。
悶々としていると、隣から「くしゅっ!」とくしゃみが聞こえた。
横を見ると、鼻を啜る石神くんと目が合って「んだよ」とどこか恥ずかしそうに頬を染めていた。
「そろそろ帰る?これ以上ここにいたら本当に風邪引きそう」
「そうするかな」
経った数分間の会話だったけど、少しだけ彼に近づけたような気がする。
彼との距離を縮められたような気がする。
どうしよう、杠ちゃん。
私、今日のこと杠ちゃんに話したいよ。
いっぱいいっぱい聞いてほしいよ。
「じゃあな」
「うん、また……明日」
また、明日。
なんてことない言葉なのに。
学校が始まれば毎日でも会えるのに、毎日でも顔を見る事ができるのに。
今だけは特別で、今だけは宝物のような。