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【雑多】いつかどこかで【短編集】

第12章 【石神千空】プラネタリウム






「ふふっ、ふ、ひっ……」
「なに笑ってんだ」
「いや、ちがっ……んふふ、」
「笑ってんじゃねえか」

笑いを堪えようとしても零れてしまう声に、石神くんはわかりやすく顔をむっとさせる。
笑うなって言う方が難しいよ。
だって、石神くんがあまりにも可愛いから。
お父さんが大好きな普通の少年なんだって思ったら、すごく愛おしくなったから。

「笑ってごめんね。あまりにも自分の中でこう、わってなって」
「語彙力死にすぎだろ」
「でも、すごいと思ったのは本当だよ、嘘じゃない。だって、宇宙飛行士になったからと言って必ず宇宙に行けるとは限らないじゃない」

そう。
宇宙飛行士は一握りの人しかなれない職業だし、なれたとしてもそこまでの道のりが大変だし、なれたからと言って必ず宇宙に行けるわけではない。
何十年経っても宇宙に行けない人もいれば、経った数年で行ける人もいる。
そういう世界。
だからこそ、宇宙飛行士になって経った2年くらいでアサインされる石神宇宙飛行士はとてもすごいと思う。

「随分と詳しいじゃねえか」
「うん。宇宙、好きなんだ。宇宙というよりは星なんだけどね」

気づけば、私は彼の隣に座って普通に会話をしていた。
不思議。
さっきまでは全然うまく言葉にすることもできなかったのに。

「そういうことか。なんで俺以外の奴がいるんだと疑問だったんだが、テメーもしぶんぎ座流星群を見に来たのか」
「……うん」

いいえ、本当は君に会いたくて来たんです。
君と流星群を見たくて、寒いの我慢してここにいるんです。

そう言えたらいいのに。
まだその勇気は私にはない。



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