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【雑多】いつかどこかで【短編集】

第12章 【石神千空】プラネタリウム






「………じゃあ、」

それ以上上手い会話が見つからなくて、私はそそくさと自分のテントへと戻って行く。
意気地なし意気地なし意気地なし。
ここで、強引にでも隣に座ってくだらない話をすればいいのに。
ばかばか。
これじゃあ、プレゼントなんて渡せない……。

大きなため息を吐いて、膝を抱えて一人で落ちこんだ。
テントからは石神くんの姿は見えない。
経った数メートル離れているだけなのに、私達の間には長い距離があって、まるで星みたいだ。
近くにいるように見えて、本当は数十キロも離れている星たち。
なんて、センチメンタルにロマンチックなことを考えてしまって、自分で失笑してしまった。

どのくらいの時間が経っただろう。
たぶんもう日付は超えている。
腕時計で時間を見てみるとやはり時刻は2時を回っていた。
夜明けに見えることが多い流星群とはいえ、ここまで何も見えないとなると今日は無理だろうな。
帰ろうかな、寒いし。

石神くんはまだ我慢強く待ち続けているんだろうか。
そう思って、彼がいた場所へ目を向ける。
………うん、見えるはずがなかった。
帰る前に、姿を見たくて、私は、恐る恐る彼のいた場所へと足を向けるが、そこに彼の姿はなかった。
いつの間にか帰ったみたい。
寂しい気持ちが全身に纏わりつく。
急激に、足元の重力がなくなっていくような感じがした。
地面との境目がわからなくなって、そのまま浮かんで宇宙に放り出されたような、何も摑めずにただ彷徨うだけの……。



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