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【雑多】いつかどこかで【短編集】

第12章 【石神千空】プラネタリウム






その時だった。
どこからかくしゃみをする声が聞こえ、私は身体を起こした。
星明かりがあるとはいえ、裏山には何一つ街灯がない。
そのため、辺りは暗く人がいたとしても全身真っ黒な影で男なのか女なのか判別するのは難しい。
それでも、私には確信できた。
くしゃみをした人物が一体誰なのか。
辺りを見渡し、私は影を探す。
暗すぎてどこにいるかわからない……。
と思ったら、またくしゃみをする声が。

あ、あそこだ。

私の位置から少し離れた左斜め前のところに、彼はいる。
心臓が急に音を立てて鳴り始める。
身体を突き破ってしまうのではないかと思うほどで、すごく、痛い。
何度も何度も気持ちを落ち着かせるために深呼吸を繰り返すけど、一向に収まる気配はなく、それどころか浅くなっていく。

だけど、決めたじゃん。
なんのためにここに来たのか。
またここでなにもできなかったらきっと後悔する。
ぎゅっと唇を噛み、竦んでしまう気持ちを奮い立たせる。

ホッカイロを二つ持って、私は彼の元へと歩き始める。
一歩近づくにつれ、影は姿を現していく。
逆立った長い髪が特徴の彼は、私の足音に気が付いたのかゆっくりと振り向いた。
暗闇でもわかる真っ赤な瞳が私を映して、ああ、だめだ。
苦しい、好き、切ない、好き。
どうしようもない思いが溢れて、意識しちゃって、言葉がうまく出ない。



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