第12章 【石神千空】プラネタリウム
「お母さーーーん、テントと寝袋干していいー?」
「なにあんた、こんな寒いのに観測しに行くの?」
「うん。流星群見たくて」
「冬は家で見るって言ってなかった?」
「いや、それさは、その時の気分っていうかさ。そういうこともあるじゃん」
しどろもどろになりながら私はお母さんに言い訳をする。
なにも後ろめたいことなんてないのに、こんなに冷汗がでるのは好きな人のためにこんなになっていると思われたくないから。
てか、普通にお母さんに恋心知られたくない、恥ずかしい。
そんな私の思いを知ってか知らずか、お母さんは「へー」というだけで興味がなさそうな生返事をした。
それはそれでなんか寂しい。
「そしたら寝袋だけじゃ足りないでしょうが。毛布も一緒に干してあげるから」
「ありがとう」
テントと寝袋を持ってベランダへと向かうお母さんの背中にお礼を言えば「気を付けるんだよ」と「見れるといいね」って言ってくれて全力で頷いた。
他にも必要な物を準備し、あとはその日を待つだけとなった。
ベッドに寝転んだり椅子に座ったりと落ち着かない。
宿題に手を付けようと思っても頭の中は別のことでいっぱいだから、はかどることもない。
ただ無駄な時間だけが過ぎていく。
その時ふと、勉強机のラックに置いているフィギュアとミニチュアが目に映った。
持って行ったところで、何もないけど。
持って行く必要なんて、どこにもないけど。
持って行かないという選択肢はどこにもなかった。
だって、宇宙は彼らのためにあるんだから。